望月 正弘
以下、太字はプログラム実行時に出力される各タンパク質の略称と対応。
(1) Pseudomonas putidaのホルムアルデヒド脱水素酵素 (FDH) のアミノ酸配列を取得。 (2) FDHの319番目のセリン残基をグリシンに置換して低温適応型FDH (cold-adapted FDH)を生成。 (3) cold-adapted FDHにミトコンドリア移行シグナルを付加。 (4) (3)で生成されたタンパク質をDNAに逆翻訳。
本デザインは、好気性真正細菌P. putida由来のホルムアルデヒド脱水素酵素を発現させることで、植物にホルムアルデヒド分解能を付与することを目指したものである。その際、異種遺伝子のシロイヌナズナの生育環境・細胞内環境への適合という観点から、以下のような工夫を凝らした。
P. putidaのホルムアルデヒド脱水素酵素 (FDH) は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD+)を電子受容体とし、ホルムアルデヒドがギ酸へと酸化される反応を触媒する。反応1: HCHO + NAD+ + H2O → HCOOH + NADH + H+FDHの上記の反応に対する至適温度は47 ℃付近とされる[1]。一方、植物の生育温度は一般にそれよりも低く、GenoCon2010の実験審査のホルムアルデヒド耐性試験では22 ℃で組換え植物の培養が行われた。この至適温度と生育温度のギャップのために、単純にFDHを植物に発現させるだけでは、FDHの活性が最大限には発揮されない可能性があると私は考えた。 そこで、本デザインではFujiiらが人工進化によって創出した低温適応型ホルムアルデヒド脱水素酵素 (以下、低温適応型FDH) [1]を採用することにした。Fujiiらの測定によれば、この変異型酵素の至適温度は野生型と比べて低く37℃付近と見られ、20℃、25℃ではそれぞれ野生型の1.4倍、1.6倍の活性を示すとされる。従って、単純に線形補間を行えば、この変異型酵素は22 ℃では1.5倍程度の活性を示すものと期待される。 なお、Fujiiらの論文によれば、低温適応型FDHでは318番目のセリン残基がグリシン残基に置換されているとのことだが、N末端のメチオニン残基を1番目とした場合、該当すると思われるセリン残基は319番目となる。本デザイン、本稿では、この319番目のセリン残基をFujiiらのいう318番目の残基だと見なしている。
P. putidaのホルムアルデヒド脱水素酵素 (FDH) は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD+)を電子受容体とし、ホルムアルデヒドがギ酸へと酸化される反応を触媒する。
反応1: HCHO + NAD+ + H2O → HCOOH + NADH + H+
FDHの上記の反応に対する至適温度は47 ℃付近とされる[1]。一方、植物の生育温度は一般にそれよりも低く、GenoCon2010の実験審査のホルムアルデヒド耐性試験では22 ℃で組換え植物の培養が行われた。この至適温度と生育温度のギャップのために、単純にFDHを植物に発現させるだけでは、FDHの活性が最大限には発揮されない可能性があると私は考えた。
そこで、本デザインではFujiiらが人工進化によって創出した低温適応型ホルムアルデヒド脱水素酵素 (以下、低温適応型FDH) [1]を採用することにした。Fujiiらの測定によれば、この変異型酵素の至適温度は野生型と比べて低く37℃付近と見られ、20℃、25℃ではそれぞれ野生型の1.4倍、1.6倍の活性を示すとされる。従って、単純に線形補間を行えば、この変異型酵素は22 ℃では1.5倍程度の活性を示すものと期待される。
なお、Fujiiらの論文によれば、低温適応型FDHでは318番目のセリン残基がグリシン残基に置換されているとのことだが、N末端のメチオニン残基を1番目とした場合、該当すると思われるセリン残基は319番目となる。本デザイン、本稿では、この319番目のセリン残基をFujiiらのいう318番目の残基だと見なしている。
真核生物の細胞は、オルガネラの膜構造によっていくつもの区画に分割されており、区画によって局在する酵素の種類、代謝物濃度、pH等の条件は様々である。 従って、そのような構造を持たない原核生物の遺伝子を真核生物に導入する際には、それがうまく機能するように適切なシグナルペプチドを付与する必要がある。本デザインでは、以下に述べるような理由から、低温適応型FDHにミトコンドリア移行シグナルを付加するのが最適と考えた。 ミトコンドリアの内膜には、呼吸鎖の入り口である複合体Iが保持されている。この複合体Iは、ユビキノン (CoQ) を酸化剤として還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NADH) を酸化型のNAD+へと酸化するNAD-ユビキノンレダクターゼ活性を有している。
真核生物の細胞は、オルガネラの膜構造によっていくつもの区画に分割されており、区画によって局在する酵素の種類、代謝物濃度、pH等の条件は様々である。 従って、そのような構造を持たない原核生物の遺伝子を真核生物に導入する際には、それがうまく機能するように適切なシグナルペプチドを付与する必要がある。本デザインでは、以下に述べるような理由から、低温適応型FDHにミトコンドリア移行シグナルを付加するのが最適と考えた。
ミトコンドリアの内膜には、呼吸鎖の入り口である複合体Iが保持されている。この複合体Iは、ユビキノン (CoQ) を酸化剤として還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NADH) を酸化型のNAD+へと酸化するNAD-ユビキノンレダクターゼ活性を有している。
反応2: NADH +CoQ + H+ → NAD+ + CoQH2ミトコンドリアにおいては、反応2によって反応1で生じたNADHがNAD+へと再生されるから、NAD+が枯渇して反応1が停滞するリスクは少ない。 さらに、シロイヌナズナのミトコンドリアにはギ酸脱水素酵素が局在していることが知られている[2]。反応3: HCOOH + NAD+ → CO2 + NADH + H+
反応2: NADH +CoQ + H+ → NAD+ + CoQH2
反応3: HCOOH + NAD+ → CO2 + NADH + H+
好都合なことに、ミトコンドリアでは反応3のおかげで反応1で生じたギ酸も速やかに二酸化炭素へと酸化されるものと考えられる。これには、反応1の停滞の防止のみならず、有害なギ酸の蓄積による細胞へのダメージを軽減する効果も期待できる。 なお、GenoCon2010の研究者Bは、FDHと共にギ酸脱水素酵素の遺伝子を導入するデザインを採用しているが[3]、(1) 先述の通り元来シロイヌナズナはギ酸脱水素酵素を保持していること、(2)FDHとこの酵素の両方をデザインに含めると規定のの2000 bpを超過してしまうこと から、この遺伝子を本デザインに組み込むことはしなかった。
なお、GenoCon2010の研究者Bは、FDHと共にギ酸脱水素酵素の遺伝子を導入するデザインを採用しているが[3]、(1) 先述の通り元来シロイヌナズナはギ酸脱水素酵素を保持していること、(2)FDHとこの酵素の両方をデザインに含めると規定のの2000 bpを超過してしまうこと から、この遺伝子を本デザインに組み込むことはしなかった。
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